一言に‘‘型枠大工‘‘と聞いてもピンとこない方も多いと思います。一般的に大工さんとは木造の建物を釘とげんのう(ハンマー、金槌)を使って建てるイメージがあると思います。しかし、型枠大工の型枠とはどんなものなのか。建設業に携わる人でなくてはイメージしづらいのではないでしょうか。
型枠とは何か
型枠とはコンクリート製の建造物を作る際に必ず必要になる枠のことです。
なぜこの型枠が必ず必要になるかと言うとコンクリートとはどんなものなのかを知ると型枠の必要性が分かってきます。コンクリートとは一般的にセメント1:砂3:砂利6の割合で水と混ぜたものです。当然水と混ぜていますから作り立てではドロドロの状態です。このドロドロのコンクリートを長時間乾燥させることにより皆さんが良く知る固く丈夫なコンクリートに固まるのです。
ではこのドロドロのコンクリートが乾燥するまでどうやってさまざまな形に保ちながら建物の形に固まるのでしょうか。ここで必要になるのが型枠なのです。ケーキの型をイメージして貰うとわかりやすいかもしれません。ドロドロのコンクリートを作りたい建物の形に添って建てられた型枠があることにより、コンクリートを決められた形に保ち、乾燥することができます。つまり型枠がないとそもそもコンクリート製の建造物は作ることができないのです。皆さんの身の回りに多くあるコンクリート製の建造物全てに型枠が使用されているといっても過言ではありません。
木材を使用してコンクリート構造物を作る
型枠を立て込む職人をなぜ型枠大工と呼ぶのでしょうか。大きな建造物を建てる際に使用する型枠は、そのほぼすべてが木材で作られています。型枠は主にコンパネと呼ばれる12mmの薄い木のパネルと桟木と呼ばれる細い木の角材で構成されています。コンパネはホームセンターの材料コーナーで見たことがある方もいるかもしれません。コンパネとは型枠に使用するコンクリートパネルの略称です。薄いベニヤ板を重ねて接着した板で合板とも呼ばれています。型枠大工はこのコンパネと桟木を用いて建物の形、大きさに合わせて型枠を作成します。型枠を作成する際にはノコギリを用いてコンパネを切断します。そのままの薄いパネルの状態では形を保持できないので、桟木をコンパネに釘で打ち付けることにより補強を行います。コンパネの大きさは一枚1800mm×900mmなどの大きさなので何枚も補強したコンパネを使用して建物の形に添った型枠にしていきます。もちろんコンパネを凹凸の漢字の様に複雑な形にしたり、時には曲げて円を形作ることもあります。こうした木材の細かな加工技術を要求される職種なので型枠大工と呼ばれるのです。加工したコンパネは現場に運び、建物の形に建て込みを行います。プラモデルの組立てと同じように現場に持っていく前にパーツを加工し、それらを現場で組み立てるのです。プラモデルと聞いて現場での建て込みは簡単に思えるかもしれませんが簡単ではありません。液状であるコンクリートを流し込む枠を立て込むのですからコンクリートが固まった時に綺麗な形になるように高い精度が求められます。加工したパネルを釘を用いてつなぎ合わせていくのですが、水平垂直を正確に調整しながら建て込みを行わなければなりません。必ずしも水平できれいな床面に枠を立て込むことができるわけではありません。現場によって立て込む場所の状況が異なるので状況に合わせながら枠の垂直、水平が狂わないように微調整を繰り返しながら型枠を組立てます。プラモデルの場合継ぎ目に段差ができることはないですが型枠は建て込みの精度が悪いと段差ができてしまいます。その段差はコンクリートが固まった後に表面に現れてきます。また、つなぎ目の隙間が大きかったり、緩かったりするとコンクリートは固まる前液状なので、隙間から漏れ出してきます。最悪の場合そこからコンクリートが大量にあふれ出ることにもなりかねません。そうならないように型枠大工は木材に対する知識や性質を理解しながら仕事を行う仕事なのです。
豊富な知識
型枠大工に必要な知識はこれだけではありません。コンクリートに関する知識や経験も必要になります。コンクリートはセメントや砂、砂利で構成されているのでとても重い液体です。固まる前のコンクリートは生コンクリート、生コンと呼ばれています。生コンの比重は1㎥あたり約2.3tにもなります。単純に1m四方の四角い型枠を建てると2.3tの重さの液体の形を保つ必要があるのです。もちろん建物もさまざまな大きさ、形があるのでそれに合わせて作る型枠には場所によっておおきな側圧がかかります。コンクリートの重さ、圧力に負けないように型枠に補強を施します。型枠は木材で出来ているのでまっすぐではありません。どうしてもたわんでしまったり、曲がってしまいます。それをまっすぐにするために骨となる金属でできた鋼管を固定します。固定する鋼管の配置や必要な本数、場所なども型枠の形を考えながら調整して施工します。ここまでで型枠はだいぶ頑丈になりまいたがまだコンクリートの重みを受けるには足りません。今度は型枠を支えるためにサポートと呼ばれる金属でできた支えを設置します。この支えは長さが調整できるようになっており、つっかえ棒の様に型枠に設置した後ミリ単位で型枠の傾きを調整していきます。型枠が波打ってしまってはまっすぐな建物の壁は出来ないので微調整を繰り返しながら図面の寸法通りの形に整えていくのです。この作業はミリ単位の細かな調整を行うことにより、完成した時の建物の形に直接影響してくるので型枠大工としての腕の見せ所です。
型枠大工の仕事について説明してきましたがいかがでしょうか。覚えることが多く難しそうだなと思われるでしょう。他職に比べても多くの知識と経験が求められる職種です。大きなビルから複雑な形をしたデザイン性の高い建物まで、その建物の形を作り上げる建設現場では花形である型枠大工は一目置かれる存在なのです。もちろん一人前になるにはそう簡単ではありません。これらの知識、技術を一つずつ身に着けていく必要があるからです。型枠大工が一人前になるには多くの知識、経験が必要になるため、他の職種に比べて時間が掛かります。それだけ難易度の高い工事を行う職種であり、現場での花形となる職人なのです。
型枠大工のキャリア
職人からさらにキャリアアップすると職長になれます。職長とは長とつく通り、現場で職人をまとめるリーダーです。型枠大工の職長に求められる知識や技術はもう一歩踏み込んだ能力です。具体的には図面を読み解く能力と現場でのコミュニケーション能力です。
型枠を作るためには建物の図面を見ながら設計図を作る必要があります。この作業を拾い出しと言います。建物の形を示した図面から寸法を見ながら型枠の寸法や形などを決めていきます。この作業は型枠大工として一人前の知識や経験がないとできません。そこにさらに数字や図面を読み解く力が必要になるので職長というリーダーになれるのです。
職長は現場でのまとめ役ですのでコミュニケーション能力や管理能力も必要になります。職人をまとめ上げるのはもちろんのこと、元請けの職員との打ち合わせや相談などもしなければなりません。このように現場をまとめ上げる職長となれる人はさらにその先の独立を目指すことも出来るのです。
ここまで長く型枠大工について説明してきましたが建設業においては他職に比べると難易度の高い職種と言えるでしょう。自分では一人前になれないのではと不安に思う方もいると思います。確かに昔は背中を見て覚えろ、技を盗めと厳しい世界で職人は育ってきました。しかしそのやり方は非効率で時代遅れと言わざるを得ません。怒鳴ったり、暴力を振るっても成長にはつながりません。弊社では新人教育やキャリアアップ支援にも力を入れています。加工場での研修や資格支援などを通して未経験者でも一人前になれる道筋を用意していますので安心してください。さらにその先の独立についても支援をしていきます。人手不足が深刻な建設業界ではこれからますます職人の需要が伸びていきます。それに伴い単価アップの交渉も積極的に行っていき、給料を上げていきたいと考えております。入月建設で一緒に型枠業界を盛り上げていきましょう!